筋トレの効果を最大限にするために非常に大切な「たんぱく質」。
「たんぱく質は1回に20g以上摂取しても意味がない」説や、「1回に40g摂取するのがいい」説など、諸説ありすぎてどう設定したらいいか迷いがちなたんぱく質の摂取量…。今回はEric Helms博士のレビューをもとに「1日の摂取推奨量」「1回の摂取推奨量」について説明します。
Eric Helms PhD
PhD、博士号所持者であり自身もナチュラルのボディビルダー。上記で紹介したレビューは数々の論文を参考にしてEric博士がまとめたシステマティックレビューです。
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目次
「1日」に必要なたんぱく質量は?
「1回」に摂取するべきたんぱく質の量は?
結論(1日に何g?1回に何g?)
個人的な意見
よくある疑問
「1日」に必要なたんぱく質量は?
Helms博士は、大前提としてこう述べています。
①筋肉を維持するためには高たんぱく食が必要
②高たんぱく食は減量中の筋肉量維持に役立つ
③減量中でなくても、たんぱく質は筋肉量増加に役立つ
④減量中の場合、維持/増量時よりも多くのたんぱく質が必要
⑤体脂肪が高い人よりも、低い人の方がよりたんぱく質が必要
つまり1日に必要なたんぱく質量は減量期と増量期で大きく変わるということです。
これを踏まえた上で、「増量中でオーバーカロリーor維持カロリーの場合、たんぱく質の摂取量は体重1kgあたり1.2-2.2 g であればいい」が、「減量中はよりたんぱく質量が必要で、減量が進むにつれてさらに必要なたんぱく質量は増える」としています。具体的な減量中のたんぱく質量は除脂肪体重1kgあたり2.3-3.1 gで、減量末期で摂取カロリーが低くなればなるほど3.1gにどんどん近づけていった方が筋肉を落とさずに減量できるとしています。
なので、1日に摂取するべきたんぱく質量は
維持・増量期 2.2g×LBM(除脂肪体重)
減量初期 2.5g×LBM(除脂肪体重)
減量中期~末期 3.1g×LBM(除脂肪体重)
- 体重×gではなく、除脂肪体重×gなので注意してください。
という風に設定してあげればいいということになります。
- LBM…LeanBodyMass[除脂肪体重]
体重から体脂肪を除いた体重。簡単に言うと筋肉量。
- 簡単な計算方法…体重-(体重×体脂肪率)=除脂肪体重
(ex.体重90kgで体脂肪率15%の場合…90kg-(90×0.15)=76.5kg)
「1回」に摂取するべきたんぱく質の量は?
「たんぱく質量20g程度で筋合成刺激が最大化してそれ以上は効果が薄い」とする説が、最もよく耳にする説ではないでしょうか。この説の元はカナダのムーア博士が2009年に発表した論文が元になっていますが、これは被験者の数が少なく、トレーニング強度、ボリュームも少ないという点がありました。
そこを改善した2016年の研究では、最低6ヶ月以上トレーニングを積んでいる被験者を対象に、「筋トレの直後に20gと40gのホエイプロテインを摂取して比べた結果、40gを摂取した方が多少筋肉合成をより刺激した」との結果が報告されており、より強度の高い全身トレーニングをしたので40gが効いたのではないかとの推測を筆者はしています。
また、国際スポーツ栄養学会ISSN(International Society of Sports Nutrition)も1回あたり20-40gで3-4時間空けて摂取することを推奨しています。
Aran Aragonの2018年のレビューでは、筋肉をつけたいのなら、1食当たり0.4g/kgのたんぱく質を摂取する。1日に摂取するたんぱく質量が多いならば、1食当たり0.55g/kgのたんぱく質を摂ることとしています。
ex.体重70kg体脂肪率15%の人の場合(徐脂肪体重59.5kg)
たんぱく質の1日の摂取量をHelms博士の基準から算出すると130-184g
1食あたり0.55g/kg摂取する場合39gなので大体この40g前後で落ち着きます。
39gを4回摂取した場合は156g、5回摂取した場合は195g。
平均的な体重の男性だと1回に摂取するのは40g前後がいいのではないかという事になります。
結論(1日に何g?1回に何g?)
▶︎1日に摂取するたんぱく質量は維持・増量期なら2.2g/kg
(減量期の場合は2.5〜3.1g×LBM)
▶︎1回に摂取するたんぱく質量は0.55㎏
つまり、
▶︎体重70㎏なら1回40g、80㎏なら1回44g、体重90㎏なら50gを目安に
▶︎1日に4-5回に分けて摂取する
ということになります。
もっと体重が重かったり、減量中であれば一日に必要なたんぱく質量も増えるので、
▶減量中なら一食当たりのたんぱく質量を増やす
▶︎増量中なら炭水化物を増やしてたんぱく質を減らす
という風にしてもいいのではないでしょうか。
摂取目標は1食40gなのに食事から摂取したたんぱく質が20g程度しかなかった場合は足りない分をプロテインで20g補う、という風にすれば効率的にたんぱく質を摂取することができます。
個人的な意見
ここまで説明しておいて何ですが、実際には「1回あたりどのくらい摂ればいいか」というのは個人の体質や状況で一概には言えないので、はっきりとはわからないんじゃないかと思います。
短期で見た場合は40gが最適というエビデンス・考え方もあるが、長期で見た場合は1食でもっとたくさん摂取しても差はない場合もあるし、今のところのエビデンスとしては1日のトータルをクリアして、1食当たり0.55g/kg(大体40-50g)のたんぱく質を1日4-5回程度に分けて飲むというのが信用度が高いかなと。
1日のトータルがある程度多い方がいいのはほぼはっきりとわかっていますが、本当にこまめに40gを5回摂取した方がいいのかはそこまではっきりわかっていません。
<そこまではっきりわかっていない理由>
①たんぱく質にも植物性・動物性をはじめとして色々な種類がある
②たんぱく質の種類によってアミノ酸の血中濃度の上昇・下降のスピードも異なる
③ホエイプロテインと固形物の肉では消化吸収のスピードも異なる
④同時に摂取する炭水化物の量や脂質の組み合わせで消化吸収のスピードは変わる
⑤トレーニングのタイミングや時間、強度、年齢など、いろんな前提条件の違いや個人差も存在する
「1度に何g、何時間おきに摂取するか」よりも「食事は1日のトータルで考えて、後はしっかり寝ること、しっかりとしたフォームでトレーニングすること」の方が大事だと僕は思います。分けて摂取するなら先ほど説明した0.55g/kgがおすすめです。
まずは「継続すること」が大切なので、摂取タイミングや固形物からの摂取にこだわりすぎるあまり1日のたんぱく質量が不足してしまったり、「こんなに細かいこと気にしなきゃいけないなら筋トレはもういいや」となってしまったりするよりは、1日の中で必要量に達していればOK!ぐらいの大雑把な感じで大丈夫です。僕もそこまで気にしてません。
よくある疑問
Qトレーニング後1時間以内に飲まなくてはいけないのか?
A,実はそうでもない。2~3時間後でもそこまで差はないので、あまり気にしすぎるのもよくない。
Q.寝る前のプロテインは効果的か?
A.日中忙しくてたんぱく質をこまめにとることができずに不足している場合は効果的ですが(1日に必要な総量を達成させるため)、総量が足りているのにプラスで摂取しても大した効果は見込めないと思われます。
Q.WPIとWPCってどう違う?
A.WPC(ホエイプロテインコンセントレート)原料のホエイから、炭水化物と脂肪をろ過したもの。タンパク質の純度が80%以下で、値段は比較的リーズナブル。
WPI(ホエイプロテインアイソレート)WPCよりも高純度。タンパク質の含有量が高く(90%前後)、乳糖がほとんど含まれていないので牛乳でお腹を壊しやすい人でも飲める。
牛乳でお腹を壊す人はWPIのホエイプロテインを飲みましょう。お腹を壊しにくい人はWPCの方が割安なので WPCで問題ないです。
Q.プロテインは太るのか?
もちろん普通の食事に+してプロテインを飲むとカロリーが増えるので計算上は太りますが、たんぱく質をしっかり摂ることは食欲を抑えてくれる作用があります。
Q.たんぱく質はプロテインよりも鶏胸肉など固形物から摂ったほうがいいのか?
減量中はDIT(食事誘発性熱産生)の観点から固形物から摂った方が良い場面もありますが、プロテインからの摂取で全く問題ありません。特に、食が細く固形物でたんぱく質を摂取することが難しい人の場合、食事にこだわらずプロテインを飲む方が1日に必要なたんぱく質量を達成することが容易になります。忙しく食事を用意する時間や、食事を摂る時間がない方もプロテインをうまく活用しましょう。
Q.どこのメーカーがいいの?
今は様々なメーカーが多くの種類のプロテインを出しているので、味と値段で好みのものを買ってもらえれば大丈夫です。マイプロテイン、バルクスポーツ、ビーレジェンドあたりがいいのではないでしょうか(マイプロテインは届くまでに少し時間が掛かるのがネック)。
- 動画内では論文を引用しながら説明しています。
- Eric Helms
Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation「ナチュラルボディビルダーのコンテスト準備のためのエビデンスベースの栄養とサプリメントの推奨摂取量」
- Athletebodyさんのサイトで一部ではありますが上記レビューの日本語訳が読めます。ボディビル大会前の減量期間を科学する