筋肥大に最も効果的な「レップ数」とは?

今回は、こちらの動画の深堀り記事です。

筋肥大にとって重要な要素である”レップ数”はよく議論される話題です。

「5回以下の高重量低回数は筋力向上にしか効果ない」

「12回以上は軽すぎて筋持久力向上にしか効果がない」

「6−12回のみが筋肥大に適した回数だ」

と言われていますが、実際はどうなのでしょうか?

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目次

低重量高回数でも高重量低回数でも筋肥大においてはどれも効果的

筋肥大において重要な指標「ボリューム」

6-12レップスを多めに行うことが筋肥大に最も効率が良い

ボリュームの増やし易い低重量高回数だけではダメなの?

じゃあ1-5RMの高重量低回数だけでもいいの?

ではどのレップ数が効率が良いと言えるのか?

各レップの特徴

どのくらいの配分で取り入れればいいのか?

種目によって高重量と低重量を使い分ける

POF法

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低重量高回数でも高重量低回数でも筋肥大においてはどれも効果的

低重量高回数(最大反復回数15回以上)

中重量中回数(同9~15回)

高重量低回数(同8回以下)

トレーニングの回数と(筋肥大、筋力向上効果)を検討した2021年のメタアナリシスにおいて、どの負荷でも自力で失敗するまで行う条件においては。筋肥大効果に差はなく、筋力に関しては中〜高重量が良い結果になりました。

どの回数もボリュームを同じにし、限界近くまで行う筋肥大には効果的です。

  • 高重量低回数は限界まで行う必要性は低めですが、低重量高回数は限界まで行わないと筋肥大効果が低くなります。

参考:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33433148

筋肥大において重要な指標「ボリューム」

ボリュームとは?

上げた重量×回数の総和

ex)50㎏10回3セット=1500㎏のボリューム

特に1RM65%以上の重量でのボリュームが筋肥大においては重要な指標になります。1RM65%というのは例えばベンチプレスMAX(1REP MAX)100kgなら65kgです。

筋肥大に効果的なレップ数というのは、1RM65%以上である程度限界近くまで上げた重量のボリュームを、関節の負担や疲労感を過剰にせず”ある程度”効率よく増やしていくことが重要になります(*ボリュームが増えれば増えればいいというわけではないので注意)。

6-12レップスを多めに行うことが筋肥大に最も効率が良い

The Mechanisms of Muscle Hypertrophy and Their Application to Resistance Trainingの中ではこのように書かれています。

Whether low reps or moderate reps evoke a greater hypertrophic response has been a matter of debate, and both produce significant gains in muscle growth (24). However, there is a prevailing belief that a moderate range of approximately 6-12 reps optimizes the hypertrophic response (86,89,205).

[訳]低レップと中程度のレップのどちらがより筋肥大に効果的かは議論の余地があり、どちらも筋肉の成長に大きな利益をもたらす(24)。

しかし、約6-12レップスの中程度の範囲が筋肥大を最適化できるであろう(86,89,205)。

ボリュームの増やし易い低重量高回数だけではダメなの?

もっと低重量で20-30RMでも、限界近くまでトレーニングをしてボリュームを高めれば筋肥大に効果的で関節にも優しいですが、低重量の場合は限界まで行う必要があり、高回数で限界まで反復するのは非常にきついトレーニングになってしまいます(スクワット30回限界まで行うことを想像すれば普通の人はまともに出来ないですよね)。

さらに低重量だけだとモーターユニット動員が不足し多くの筋繊維を使うことができず、低重量だけ(特に1RMの65%以下での20−30REP)のトレーニングは筋肥大に最も適しているとは言えなさそうです。

The Mechanisms of Muscle Hypertrophy and Their Application to Resistance Training

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20847704

However, it is important to note that the practical application may still favor the use of a lower number of repetitions using moderate to high loads as the performance of low loads until volitional failure results in higher discomfort due to the higher number of repetitions, longer time under muscular tension, and time required (60).

[訳]しかし、実際は反復回数が多く筋緊張下に置かれる時間が長くなると、限界まで低重量で行うと不快感が大きくなるため、中〜高重量で低回数の方が良い場合が多いことに注意する必要がある(60)。

The use of high repetitions has generally proven to be inferior to moderate and lower repetition ranges in eliciting increases in muscle hypertrophy (24,71). In the absence of artificially induced ischemia (i.e., occlusion training), a load less than approximately 65% of 1RM is not considered sufficient to promote substantial hypertrophy (115). Although such high rep training can bring about significant metabolic stress, the load is inadequate to recruit and fatigue the highest threshold MUs.

[訳]高反復回数の使用は、一般的に筋肥大の増加を誘発する上で、中程度および低反復回数よりも劣ることが証明されています(24,71)。人為的に誘発された虚血(加圧トレーニング)がない場合、1RMの約65%未満の負荷では、筋肥大を促進するのに十分ではないと考えられる(115)。このような高レップトレーニングは、有意な代謝ストレスをもたらすことができるが、最高閾値のモーターユニットを動員して疲労させるには不十分である。

じゃあ1-5RMの高重量低回数だけでもいいの?

高重量低回数1RM85-90%で3-5回だけで行なっても、トータルボリュームを確保すれば筋肥大に効果的です。

70㎏10回3セット(2100㎏)でも100㎏3回7セット(2100㎏)でもトータルボリュームが同じである程度の高重量を扱うか限界近くまで行うなら筋肥大効果はほぼ同じです(今わかっている限りでは)。

画像1

Strength-Type resistance training (ST) 3レップス7セットと Hypertrophy-Type resistance training (HT)10レップス3セットでグループを分け

同じボリュームになるように調整しトレーニングした結果

画像2

二頭筋の筋厚はどちらも同程度増加していました。

画像3

筋力に関しては高重量の3レップ7セットの方が増加が大きく、ベンチプレス・スクワットの1RMどちらも高重量低回数の方が増加は大きい結果になっています。

ボリュームを同じにすれば高重量低回数も筋肥大にも効果的で、筋力向上もより望めます。

参考:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24714538

しかし、高重量低回数のデメリットとして

・セット数もインターバルも長く非常に時間がかかる

・精神的な疲労と関節の負担が大きくなる

が挙げられます。

・時間がかかる

ボリュームを同じにするためにセット数を多く、インターバルも長くしないといけないので非常に時間がかかってしまいます。

例えば、

70㎏10回3セット(2100㎏)

100㎏3回7セット(2100㎏)

上記はどちらも同じボリュームですが、前者の10レップは比較的早くトレーニングが終わるのに対して後者の低回数トレーニングはかなり時間がかかりなります。

・精神的な疲労と関節の負担が大きくなる

時間が長くなってしまうので精神的な疲労も大きくなり、さらに高重量を多く行うと関節への負担も大きくなります。上記の実験に参加した高重量低回数グループの被験者は精神的な疲れと関節の痛みを訴えていました。

つまり高重量低回数だけで筋肥大を最大化させるのも怪我のリスクが高く、定重量高回数だけで筋肥大を最大化させるのも時間もかかり精神的な負担も大きく、あまり効率的とは言えません。

ではどのレップ数が効率が良いと言えるのか?

6-12レップのセットを多めに行うことが筋肥大に最も効率が良いと言えます。

・ある程度の重量を扱うことができる

・きつくなりにくい

・関節への負担も大きくならない

・時間もかかり過ぎない

こう聞くと、「6−12回だけやればいいのでは?」と思うかもしれませんが、

・高重量低回数は筋力を伸ばしやすい

・低重量高回数も代謝ストレスをかけやすい

など、6-12回よりも筋肥大に効果的な面もあり、回数によって刺激を変えトレーニングに体を慣れさせないようにすることも出来るのでそれぞれを取り入れて筋肥大を最大化できるようトレーニングプログラムをデザインします。

各レップの特徴

1-5レップ

・筋力アップにも効果的

・ボリュームを確保するのにセット数が多くなってしまう

・精神と関節の疲労が大きい

6-12レップ

最も効率よくボリュームを高めることができる

12レップ以上

・限界まで行う必要があり不快感が強く、非常にきついトレーニングになる

・モーターユニットが不足(筋繊維の全てを鍛えることができない)

どのくらいの配分で取り入れればいいのか?

Perform 2/3-3/4 of your volume in the 6-12 RM range, and the other 1/4-1/3 in the lower rep higher intensity (1-6 RM) and higher rep lower intensity ranges (12-15RM)

[訳]ボリュームの2/3-3/4を6-12RMの範囲で、他の1/4-1/3を低レップ高強度(1-6RM)と高レップ低強度の範囲(12-15RM)でトレーニングします。

The Muscle and Strength Training Pyramid より

1日に12セット行うなら、以下を目安にしましょう。

8セットを6-12レップ

2セットを1-6レップ

2セットを12-15レップ

  • 高重量はレップ数が少ない分セット数を多くしないとボリュームが少なくなるので、高重量低回数の場合はセット数が少し多くなります。

種目によって高重量と低重量を使い分ける

バーベルスクワット、ベンチプレス

(複数の関節を動かし高重量を扱う種目)

▶︎筋力向上を狙ったコンパウンド(複合関節)種目

▶︎高重量低回数向き

ラットプル、ダンベルベンチプレスなど

(複数の関節を動かすが対象の筋肉を狙う種目)

▶︎筋肉を狙ったコンパウンド種目

▶︎中重量中回数向き

サイドレイズ、ダンベルカールなど

(1つか2つの関節を動かして対象の筋肉を狙う種目)

▶︎アイソレーション(単関節)種目

▶︎低重量高回数向き

低重量高回数のトレーニングは非常にきついので、スクワット・デッドリフトなどのコンパウンド種目で行うと筋肉の限界より先に気持ちが折れたりフォームが崩れ怪我のリスクが高くなってしまいます。脚を高回数で鍛えたい場合は、レッグエクステンション等のアイソレーション種目で行うとそこまできつくならずに限界まで行うことができます。

サイドレイズなどのアイソレーション種目で高重量低回数で行うと、怪我のリスクが増えフォームが崩れ対象の筋肉を狙って鍛えにくくなってしまいます。

まとめ:種目によって高重量か低重量か変えましょう

筋力向上を狙ったコンパウンド(複合関節)種目→中〜高重量低回数向き

アイソレーション(単関節)種目→低重量高回数向き

筋肉を狙ったコンパウンド種目→中重量中回数向き

POF法

POF法の考え方も考慮してプログラムデザインを考えます。

POF(Position Of Flexion)法とは:

筋肥大には3つの刺激(①機械的張力[Mechanical Tension]②筋損傷③代謝ストレス)があり、全ての刺激を取り入れると最も効率的なのでは?という考え方で種目やレップ数を決める方法。

Brad J. Schoenfeld博士がまとめた「The Mechanisms of Muscle Hypertrophy and Their Application to Resistance Training-筋肥大のメカニズムとレジスタンス トレーニングへの応用」というレビューを元にPOFの考え方を紹介します。

①Mechanical Tension 機械的張力

機械的というのはそのままの意味で、「機械のように曲がった関節を伸ばす伸びてる関節を曲げる(伸ばさなくても耐える)力」です。簡単に言うと、重りをあげる時に働く力です。機械的張力は3つの負荷の中で、筋肥大において最も大事な負荷と言われています。

機械的張力をで負荷をかけやすいのがコンパウンド種目(アイソレーションでも機械的張力はかかるが、負荷を上げやすいのがコンパウンド種目)で、例えばバーベルを使ったベンチプレスやスクワットがこれにあたります。

機械的張力で高負荷を効率よくかけやすいのがコンパウンド種目のミッドレンジ種目

②筋損傷

筋肉に損傷を与えるような刺激です。

ストレッチ種目(筋肉が伸びた状態で負荷が掛かる種目)で多く負荷がかかります。

例えば胸の種目ならダンベルフライ、二頭筋の種目ならインクラインダンベルカール等になります。トレーニング後に筋肉痛になりやすいのは、この筋損傷を与えるようなトレーニングです。

ストレッチ種目で高重量を扱うと筋肉が切れてしまうなどのケガのリスクが高まるので8-12レップの範囲で行います。

③代謝ストレス

重さによる負荷ではなく筋肉に代謝物質が溜まることのよって起こるストレス、負荷です。いわゆるパンプ狙いなので、筋の緊張時間を長くし高回数行うアイソレーション種目、そして筋肉が縮んだ時に負荷がかかる収縮種目を行うと最も代謝ストレスが高くなります。

  • 低重量高回数のアイソレーション種目でも機械的張力はかかりますし、中重量中回数でも代謝ストレスはかかります。

POF法での種目も考慮しながらトレーニングプログラムを選んでいきます。

すべての要素を考慮した胸のトレーニング例

例えば胸のトレーニングを週に12セット行うなら、

ベンプレス 3-5レップ 4セット

インクラインベンチプレス 6−8レップ 3セット

ダンベルフライ 8-10レップ 3セット

ケーブルフライ 12−15 2セット

というセットの組み方になります。これは1日で胸の日をやる場合も、1週間で全身トレーニング法で胸を4日に分ける場合も同じような考えです。

ピリオダイゼーションや非線形ピリオダイゼーションでバリエーションをつける方法もあります。

ピリオダイゼーション(期分け)で行う場合

高回数時期:12-15回| 2-4週間

中回数時期: 8-10回| 2-4週間

低〜中回数時期: 5-8回|2-4週間

低回数時期: 1-4回|2-4週間

DUP(非線形ピリオダイゼーション)

WEEK1:12-15回

WEEK2:5-8回

WEEK3:8-10回

WEEK4:1-4回

期間によって回数による刺激を変え、トレーニングに体が慣れないようにするという手段も取れるので、全ての回数をバランスよく行うことてトレーニング効果を最大化できます。

個別性の原則

個別性の原則:人によって適切なトレーニングは変わるという原則

速筋と遅筋の割合には個人差があるので、この割合によっても回数による反応の良さには個人差が出るようです。人よっては高重量低回数が良い人もいれば、低重量高回数が良い人もいるので断定はできません。

決めつけ過ぎずに柔軟にトレーニングをすることも大事です。

まとめ

・低重量高回数でも高重量低回数でも筋肥大においてはどれも効果的

・6-12レップスを多めに行うことが筋肥大に最も効率が良い

・ボリュームの70%を6-12RM、30%を高重量低回数(1-6RM)と低重量高回数(12-15RM)各15%をを目安にするのが効果的

・高重量低回数か低重量高回数を種目によって選ぶのが良い